とらじろうの箱。

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【ひらめき☆マンガ教室】第1回課題・自己紹介 ネーム感想編その4【第4期】

第1回課題・自己紹介

はじめに

 ぼくがどのようなスタンスでネームを読んでいるか、などの説明は以前の記事に詳しいのでそちらを参照していただければ幸いです。

toraziro-27.hatenablog.com

作品を読んだ環境

 ノートPCのchromeブラウザでスクロールを利用して読みました。画像をクリックして1ページ毎に表示される形式では読んでいない、と言うことです。

 以下、本題。

作品への感想

『母は迷探偵』作者:片橋真名

 話の構成が非常にしっかりしていて、とても納得しながら漫画が進んでいくように感じました。特殊なコマ割りの使い方も上手で、5ページの扇形に展開されるコマ割りは主人公の畳みかけるような怒りを素晴らしく表現できていると思います。それでいて余白から飛び込んでくる『ドンドン』も生きていてすごいです。

 全体を通して情報が適切に管理されている印象を受けました。

 特にすぐ目立つような違和感はなかったのですが、ところどころ「あれ、ここで間を取らないんだ」というようなところがありました。

 例えば虐待のシーンには伏線があったので違和感が少ないのですが、主人公がカミングアウト(こういう表現が苦手だったら申し訳ありません)するシーンではそれらしい伏線もなく差し込まれたように感じたので、「あら、なんか急に展開したぞ……」と思いました。間がとってあると「おいおい、ちゃっかりしてるな主人公!」という感じになったのかなぁと思いました。

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『どうせゾンビ』作者:くたくた

 めっちゃいいですね。コンビニの名前がラッキーマートだったり、公園の名前が幸福公園だったりするの好きです。それとケガの程度によってゾンビ化の進行に変化があるなど、どこかSFチックな設定を感じるのもぼくの好みに近くて楽しく読ませていただきました。

 深刻なことを語りながらも陽気な雰囲気で話が進んでいくので、幅広い読み手にアプローチできる作りになっているんじゃないかと思います。ネームアピールで書かれている『あきらめた先にあるポジティブさ』というテーマについても伝わってきました。

 冒頭で描かれた「死にたいんだけど死にたくない」というのも、ゾンビモチーフと素晴らしくマッチしていると感じました。

 一方で8ページと9ページのつながりは少し狙いとずれているのではないかと思います。地雷に触れられた先輩が思わず声を荒げてしまったことに対し驚く主人公君のコマが次ページに入っているので、読者としては時間の経過を感じてしまい、主人公君の驚きと先輩の怒りとのつながりが奇妙なものに見えました。

 また、12ページの3コマ目では主人公と先輩の側にカメラが向けられているよりも先輩の側からの視点を描いた方が感情のインパクトが出るのかもしれません。ただし、このコマで書きたかったと思われる、二人の表情をどう見せるのかが難しくなるのでトレードオフになるのですが……。

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『雪うさぎ、つくる』作者:柴田舞美

 ほっこりする漫画ですね。読んでいて心が温まる様な気持ちになりました。子供らしく、全身を使った表現で自身の悲しみや怒りや憤りが表現されているので、伝えたい感情がとてもクリアに提示されているように感じました。

 ネームアピールでは『なんだかよく分からない状況になってしまったような気もす』ると書いていましたが、ぼくとしては十分にアリだと思います。というより、擬人化された子が出てくることでグッと作品に色が付いたように思いました。ぼくは擬人化雪うさぎ、とても好きです。

 ただ、もし気になるようであれば少しページを増やして雪うさぎが溶けてなくなる前の日から始めるのも良いのかなと思いました。つまり、雪うさぎを創ったものの冷凍庫には入れられずそのままにしてしまったシーンから始めると、より話が見渡せるのかもしれないということです。その際に一人取り残されてしまった雪うさぎの擬人像を描いてあると早い段階で読者がその世界観を把握できるので、さらに違和感がないかもしれません。

 これについてはペン入れ段階で調節される予定だったのかもしれませんが、文字間の余白が少ないこととポイントが小さいことから、全体的に文字が読みづらく感じました。特に文字が増えた3ページでは文字と絵を同時に見ることが出来ず、文字を読んで絵を見るというような段階を踏んで漫画を読まなくてはならなくて少し目の止まる感じがありました。

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『101みらい』作者:内在ナコト

 ここまで自分の感じていることを形にできるのは素晴らしいなと思いました。ひらマン受講者と一般読者(という書き方が良いのか分かりませんが)とで読み方が全く異なる様な作りになっているのもすごいです。

 不安や焦燥感を可視化し、それに対する自分の戸惑いや焦りを木彫りや電話と言った分かりやすい物質的なものに置き換えて表現する力は強烈な武器だと思い、羨ましくさえありました。

 ぼくはひらマン聴講生なのでどうしてもこの漫画をそういう視点で見てしまいます。その前提での話になりますが、儚い期待を抱いていた飲み会で『1』に挟まれた『0』になるシーンや『ものさし』にこだわる演出などはひらマンに通う動機や期待を見事に表現できていると感じます。最終的には『本当にゼロになる』ことを求められ、それを受け入れた結果、30万を払うようになっているのもぼくはすごく好きです。

 その一方でところどころコマ使いや演出の気になるところがありました。例えば3ページの4コマ目では電話をすることで『不安』が消える演出がありますが、『あ、良かった!』の台詞が縦に長いことと、主人公の顔が近いことからそちら(消えている演出)まで目線がいかないように感じます。

 加えて、電話相手に怒鳴ってしまうシーンでは、電話相手と主人公との間の関係性が良く分からないために、ここで怒鳴っているのがどれくらい深刻なものなのかいまいち掴みかねてしまいました。ただし、こちらに関しては『セーフティネット』としてのシステム的なものなのでこのままでも良いのかもしれないです。

 オマケですが、ここまで構造のしっかりした漫画を描かれる方ならネームアピールは不安でもきちんと書いた方が良いかと思います。編集者(第三者)との対話を前提に置いたシステムですし、自分が何をしているのか言語化する行為は漫画を描くこととはまた別の構築力を鍛える練習になると思います(これについては講師の方からもっとしっかりした説明があると思いますので、私の解釈と食い違うところがあればそちらを優先してください)。

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『生きてるかもしれない』作者:田山

 14ページの漫画としてではなく、複数の漫画の集合を総合的に一つの表現としてみるような読みかで読ませていただきました。うーん……。と言うより、今回の提出課題の本体はネームアピールのような気がするのでもしかしたらそちらへの感想を書いた方が良いのかもしれません。

 このようなテイストで「空から美少女」を見るとぼくは『ef a fairy tale of the two.』を思い出します。『自己紹介漫画』として読むのなら過去から現在に至るまで「空から美少女」を待っている事実のほかに、そこへ付随する思いや思考を知りたいなぁと感じました。

 ぼくが読む中で興味を惹かれたのは、「文豪の文を学んだら真人間になれるって、どうして思ったんだろう?」とか「”強い”字書きってどういう意味なんだろう」とか「なんで仕事を”労働”って書くんだろう」とか、おそらく田山さんが当たり前だと思っていることの方です。

 ネームアピールによると『「自己紹介」であることから、多少作品の質にはねても、自分の好きな作品をあらゆる手段で暗示し』た、と言うことでしたが、そこからもう一歩進んで「どうしてその作品が好きなのか」を知ることが出来れば『自己紹介』然とするのかなぁと感じました。

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『ぬいぐるみの衣装製作が得意な先輩』作者:桃井桃子

 ひとえに女の子二人の関係性を描いた漫画として出来が良いので普通に読んでしまいます。すごくポジティブな漫画ですね。全体的な文法が百合漫画のそれでできているので、刺さる人にはめっちゃくちゃ刺さると思います。ぼくにも刺さります。困った。

 かなり文法がしっかりしているので3~5ページまで読むと最後までの流れが固まるのも読みやすさの一因だと感じました。

 困りました。百合漫画としての感想は出てくるんですが、漫画としての感想がすぐに出てきません。倉田と真名橋先輩の身長差が分かりやすいように立ち上がるコマの手前に、座っている倉田を見下ろす真名橋先輩の構図が見たかったなぁとかその手の感想になってしまいますね(これも百合漫画的視点の感想か……)。

 読み切りの漫画としてはものすごくまとまっていて完成されているように思えました。ただ、これが『自己紹介漫画』として成立しているのかどうかと言われるとどうなのかなぁと思います。ただこの点については、課題文をどう解釈したのかによって十分に評価の変わるところだと思うので、ぼくにはそう見えた、という程度に受け取っていただければ幸いです。

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『僕らの身体はコンビニで出来ている』作者:ヤノナナミ

 コンビニ定員を量産する『中央生産工場』は想像したことが無く、とてもユニークで思わずにんまりとしながら読みました。ふつう、技術は時と経験によって上達していくものなのでよく訓練されたコンビニ定員さんのあとに年配の方が新人として登場する流れも新鮮さがあると同時に、コンビニというもののとある性質を良くとらえているように感じて興味深かったです。

 4ページには『ところで、話は全く変わるが』とありますが、どうもネームアピールを読むに地続きの話だと察します。ネームアピールでは『コンビニに依存しすぎててマズいなぁという感情』がベースだと書かれているからです。

 ベースにした、ということはあくまで下敷きにしただけであって「マズい」感は必要としていない可能性もあります。ですが、コンビニの話の前に自給自足にまつわる二つの話が挿入されていることから、おそらくはきちんと「まずい」感じを伝えたいんじゃないかと思いました。

 それを踏まえると、ろ過器とソーラーパネルのくだりはコンビニの話で挟まれるようにして挿入されると良いんじゃないかと感じました。現在のように『世界が滅亡してもコンビニだけは残っててほしい』というモノローグが間を開けず一番最後に置かれていると、ストレートに受け止められてしまうのではないかと思います。

 ぼく個人としては、ろ過器を作っていたり太陽光パネルを使ってスマホを充電していたりするという話はそれだけでとても楽しいものでした。お会いした際には、是非、ろ過装置の良しあし、ソーラーパネルを使って充電する際のコツなどをお聞かせください。

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『I am a Snoozer』作者:横たくみ

 『朝が嫌いだ』というモノローグがコマ線の枠外で始まる導入はとても惹きつけられます。まるで劇場版アニメのような、静けさを感じる始まりだと思いました。

 ローテンションな、そこそこの歳の主人公紹介から始まる物語は、対照的に若い青年との出来事によって静かに坂を転がり始めます。この坂の傾斜が実にリアルなおだやかさでとても好きです。最終ページでの主人公の表情もとても良くて、シンプルな線をした眉と目が、このちょっとしたことで転がる気になってしまう主人公の雰囲気ととてもマッチしていると感じました。かわいいと思います。

 ぼくはこの線が好きなので、ペン入れした際の背景の具体性とキャラ線の主張とのバランスが気になります。ネームで感じるキャラクターのかわいい感じがペン入れをした後でも残るのかどうか……。

 ものすごく惹かれる導入であることは先ほども書きましたが、その一方で、1ページの中段左にあるモノローグと、2ページ上段にあるモノローグは、絵がない状況で読ませるには少し長いように思えました。もう少し話が進んだあとで挿入された場合には読者が物語に入り込んでいるので、この程度の文量があっても問題なく読み続けるとは思います。ですが、ぼくは、2ページ上段のほうは一瞬ちゃんと読むかどうか逡巡してしまいました。

 また、5ページの中段に入る居酒屋のおばちゃんのギザギザコマは、れだけでおばちゃんのキャラが良く伝わる演出だと思います。その反面、メイン二人の会話と同列に感じてしまうので、もしかするともう一列後ろに配置出来たらいいんじゃないかと感じました。

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おわりに

 これで提出者全員分のネーム感想が終わりました。(終わったはずです。万が一取りこぼしがあった際には教えていただければ幸いです。)

 皆さん本当によくできていて(上から目線のようでごめんなさい)、感想を書く方として楽しくもあり大変でもありました。第一回ということで、先生方からのネーム講評がどうなるかわかない状況でしたので何とかして初回授業前に書き終えたいと考えていました。完遂できて良かったです。

 さて、ネーム感想を書き終えてのまとめはまた次の記事に回したいと考えています。

 それでは、また次の記事でお会いしましょう。

興味のある方は以前の記事も是非お読みください。

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