とらじろうの箱。

自分でプレイしたゲームや、読んだ漫画や本などについて書いています。なお、このブログではAmazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。

【ひらめき☆マンガ教室】第1回課題・自己紹介【第4期】

『あなたはマンガを、どうする?』

ひらめき☆マンガ教室とは。

 大見出しは株式会社ゲンロンによる、ひらめき☆マンガ教室(以下、ひらマン)のスローガン(?)です。ぼくは2020年に第4期を迎えたこのスクールに聴講生という形で参加しています。

school.genron.co.jp

 ひらマンでは主任講師の「さやわか」さんをはじめ、今もなお現場最前線で活躍するプロの漫画家および編集者の方々がゲスト講師として教壇に立ちます。2017年から始まったスクールですが、毎年のように素晴らしい卒業生を輩出しています。もちろん、この教室からプロ漫画家としてのスタートを切る方もいました。

聴講生と受講生

 ひらマンには受講生と聴講生という2つの制度があります。聴講生は受講生とは異なり、課題ネームの提出や講評をうけることが出来ない代わりに授業料が半額となる制度です。授業そのものには問題なく参加でき、講師陣とのコミュニケーションをとることも可能です。

 ぼくは運がいいことに幼少期から漫画に触れることが出来た一方、なかなか漫画そのものについて他人と話すことが出来ないことに寂しさを感じていました。そんな中でこの教室のことを知り、聴講生となることを決めました。

『ぼくはマンガを、どうするか』

 ひらマンは9月から本格的な授業が始まります。

 ぼく個人としてひらマンのスローガンをどう受け止めてそこへ臨むのかを明確にしておきたいと思います。というのも、これから先、時間と労力の許す限り4期受講生のネームや完成原稿を読んで感想をネットの海に投げつけるつもりだからです。

 当たり前ですが漫画を描くという行為は非常にエネルギーを使うものです。それに対するけじめをつけるためにも自分のスタンスを明確にするのは大切だと思うのでここにその軌跡を残そうというわけです。

 そして『ぼくはマンガを、もっと多様に楽しく読むことが出来るものにする』という目的を設定しました。もっともこれは暫定的なものであり、漠然としています。受講を続ける中で変化があるのかもしれません。とにもかくにも『マンガを、もっと多様に楽しく読む』ためにはどうすればいいかを念頭に置きながらネームを読み、完成原稿を読もうという意思表明をします。

第1回課題・自己紹介

 ひらマンでは月に一度の頻度で「課題」が提示されます。

 第1回に当たる今回の課題は「自己紹介」でした。なお、ひらマンの課題は毎回ネット上で公開されていて誰でも閲覧できます。漫画に興味のある方なら一読して損はないので是非ともご覧ください。

school.genron.co.jp

 ひらマンの受講生はこの課題文を受けて毎月ネームを切り、原稿を仕上げていくことになります。したがってこの課題文をどう受け止め、どう解釈するかがキモになるでしょう。それは主に読むことがメインになる聴講生も同様です。受講生が課題文をどう読み、どう受け止めて漫画を描いたのか。それを十分に理解して読むことで漫画と書き手、ひいては漫画と文法に近づけるはずだからです。

 自分が課題文をどう読んだか、受講生の理解とはどう異なるかを考えるためにも自分の解釈を残していこうと思います。

ぼく的課題文要約

 マイルールとして課題文を多くても3つにまとめて要約していくことにします。提示された課題の全文を知りたい方は上のリンクからご覧ください。

  1. マンガを描く目的
    作者がどんな人なのか、どういう感じ方をする人なのかを読者と共有するために描く。
  2. 用いる材料
    作者自身が実際に経験したことと、それに対する感情を使った物語として料理する。「使った」というのがポイントで、それそのものでなくとも構わないことに注意!
  3. お手本
    作者自身のことを描いたとおぼしき作品として『ちびまる子ちゃん』と『東京都北区赤羽』が挙げられている。ここで「おぼしき」と言われたことがポイントと考える。つまり、筆者の意図や事実がどうこうと言う話ではなく、読者としてそう読むことのできる漫画が手本に挙げられたということである。
課題文を読んで考えたこと
  1. 読者にとって「この漫画は作者のことを描いたんだな」と感じる漫画ならば『自己紹介漫画』として読まれる。普通、漫画を読む場合にはキャラクターと筆者は重ならない。自己紹介漫画として機能するには登場人物が筆者と重なるように提示することが必要である。 
  2. 意味のある(機能する)自己紹介とは何か? 今までの人生でいくらかの自己紹介をしてきたが、後々「あの自己紹介が生きたな」と思い当たることはほんとんど無い。形ばかりの自己紹介をしてもお互いのことを知るためのモノとはならないと考える。自分が友達を誰かに紹介する際に用いるような、他己紹介として耐え得るものが良いのではないだろうか。
  3. ○○ってどんな人? と聞かれた時、自分はどう答えるだろうか。優しい、賢いなどその人の属性を答えることもあるが、それはあまり紹介する気のない場合に思える。本気で紹介するときは「○○らしさ」を感じられる面白エピソードや、再現性が高くかつ意外性のある現象を抜き出して伝えるはずだ。

 まとめると「自己紹介」とは言いつつも自身を客観視し、属性や記号に落とし込んで伝えることが大切なのではないかと考えた。

お手本作品の構造分析
  1. ちびまる子ちゃん
    「主人公=過去の作者である」と明確に宣言し、語り口の人称は一人称を用いている。作者と主人公は年齢的に大きく離れており、読者はそういう意味での過去の作者を感じながら読むことになる。モノローグでは状況説明や自虐的説明を行っている。自虐するのは本人そのものを対象とはせず、本人の行動によるお粗末な結果などを説明する際に用いられる。あるある(学期終わりにたくさんの荷物を持ち帰る、親にお小遣いをせびるなど大衆的な出来事)に対する自身の応答、それも一般的なものとは特に異なる応答を描く。
  2. 東京都北区赤羽
    主人公の置かれている環境(生活環境やキャリア的なもの)を説明し、主人公=作者であると宣言する。『ちびまる子ちゃん』に比べると作者(および読者)と主人公の時間差は小さめ。明確に存在する現実が舞台であり、描かれている経験を読者が疑似的に追体験聖地巡礼)することが比較的容易にできる。主人公が不思議な環境や人々に振り回されるような面白エピソードがメイン。
最終的に意識すること
  1. 「自分っぽいこと」のエッセンスを取り出し、共感性のある(守備範囲の広い)物語にする。
  2. その漫画を読んだ人が第三者に「○○さんってこういう人らしいよ」と言いたくなる、言っても違和感のない内容にする。
  3. インプット(出来事・環境)とアウトプット(応答・変化)を明確に提示する。
自分なら結局どうするか

 主人公はぼくであり、舞台は現代の京都である。

 ついこの間、マジで目の前で人身事故の瞬間を生まれて初めて見た。その時のぼくはあまりにも客観的であり、なんなら人々の行動をメモまでしていた。振り返ってみるとこの時に考えたことやその前後の行動が非常に自分らしいと思えたので、これを題材にする。(上で検討してきたこととは異なる内容になるが、直近で得たこの経験のインパクトがあまりにも大きかったのでこれを題材にしようとする自分を抑えられなかった。)

 出発地から京都へ向かうまでの内容を描き、めくりで事故のシーンを描く(大阪京都間のひどく平らな線路がとても印象的だった)。メモを元に状況の説明および変に地に足が付かなかった自分の感情を描く(コスプレをしていた撮り鉄がいたこと、やけに焦って無理にドアを開けようとした青年がいたこと、笑って会社に連絡していたサラリーマンがいたことなどを描く予定)。その後、何事もなかったかのように振る舞うふりをして観光を再開したことを描き、大文字山に登って街を見下ろした時に考えたことを描いて漫画を終わりにする。この時の京都はご時世もあり、非常に人が少ない。(8頁予定)

 物語として軸となるのは、予想だにしていなかった事故を受けての感情的な揺れと最終的な落ち着きである。地に足が付かない状況から、とりあえずの一歩を踏み出したところを締めにする。

 お手本として挙げられていた『東京都北区赤羽』のテイストに近いものを目指す。

あとがき

 ここまで第1回の課題文を受けて考えたことをまとめてきましたが、非常に時間とエネルギーを使う作業でした。ネームを切るわけでもなく、ネームのネームを描いた程度に過ぎない状況でこの疲れなのですから、漫画を描くという行為がいかに大変なものか分かります。

 次のエントリーでは早速提出されたネームに対する感想を描いていく予定です。なんかもうすでに、ネームを描いて期限内に提出できただけでみんな凄い!って言いたいです。

 ネームの熱量に失礼のない感想となるようにがんばります。

 それではまたお会いしましょう。