とらじろうの箱。

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【ひらめき☆マンガ教室】第1回課題・自己紹介 ネーム感想編その1【第4期】

第1回課題・自己紹介

前置きがあるので、読み飛ばしたい方は目次からお好きな場所にお飛びください。

はじめに

 改めまして、ひらマン4期聴講生の「とらじろう」と申します。今回はさっそく聴講生の本題ともいえる提出作品への感想を書いていこうと思っています。

 

 今後変更があるかもしれませんが、以下に感想エントリーの構造を示します。

  1. 課題文の要約
    どんな漫画をどういう風に書いてほしいと言われたのか、ぼくなりに一言か二言でまとめます。
  2. 何を意識して作品を読んだか
    2つ3つほどの要素を提示します。その点については意識的に読み取ろうとして読んだよ、という意思表示です。
  3. 作品を読んだ環境
    PCで読んだ、とか、スマホで読んだ、A4に印刷して読んだ、とかそういう奴です。ひらマンでは『誰に向けて描いたのか』が大切だと思うので漫画がどのような媒体に掲載されるのか(どのような環境で読まれたのか)は大きな要素であると考えてこの欄を設けます。
  4. 作品への感想
    エントリーの本丸ですね。長くなり過ぎないように心がけますがシンプルに作品への感想を描きます。ただし、少なくとも一つは「ここはこうした方が良いのでは?」的なことを書くつもりでいます。

*2020/08/28/12:00の時点で掲載されているネームについての感想エントリーです。ひらマンの課題提出者一覧を元に左上から順番に読んだ順で書いていくので、この記事での掲載順番に深い意味はありません。*

課題文の要約

 今回は愚直に課題文にある『自己紹介を、具体的には「あなたの実際に経験したことと、それに対する感情を使って物語を描く」というやり方でや』る、という文言そのものが要だとしました。

何を意識して作品を読んだか

 まずは「漫画が作者の自己紹介として読めるか」です。ああ、これは作者のことを書いた漫画なんだな、とわかるかどうかが基準になります。

 2点目は「”物語”になっているか」です。一口に”物語”と言っても難しいですが、ここでは<ある出来事に対しての応答が描かれており、その前後の変化が明確に示されているもの>を物語として定義します。ただし、<変化する機会ではあったが、あえて変化しなかった>というものも物語に含みます。

 最後に「視線誘導でつまづかなかったか」です。技術的なことは講師の方から指摘があると思います。なのでぼくは、何の気なしに読んだときコマを読み飛ばさなかったか、とか、このコマの前後で目が遅くなった、とか単にぼくが読んだ時の事実を基準にします。かなり個人的な感覚による部分だと思います。

作品を読んだ環境

 ノートPCのchromeブラウザでスクロールを利用して読みました。画像をクリックして1ページ毎に表示される形式では読んでいない、と言うことです。

 導入が長くなりましたが、以下、感想になります。

作品への感想

『木陰のヒツジ』作者:シバ

 主人公君の顔がめっちゃ好きです。この漫画で必要になるアンニュイな芝居や慌てたような顔、呆然とした表情をさせるにはすごくしっくりくるキャラクターのように感じました。特に8ページ目の『何だ ここ…』のコマが好きです。そして身体全体を使って演技させている最終コマからすごい開放感が見て取れて物語としてごく自然に楽しめました。

 2ページ目のタイトル表示もすごく好きです。単にクレジットしただけでなく、作品の一部として楽しめました。7ページ目のヒツジ探しにあくせくするシーンは、台形にされたコマ割りからページ全体としてまとまった慌ただしさを感じ、ぼんやりと眺めるだけでも楽しいです。

 また、唐突に現れるヒツジがめちゃくちゃ良かったです! 一目見て『異質なもの』とわかるし、なによりデザインが可愛いので顔芸をする際の違和感が明確になり、作品で伝えたいこととマッチしているように感じました。

 一方で3ページ目の1コマ目は、ヘルメットと作業着の奥にイケてるLANDが映るもので、初めて読んだときには誰がどこでどんな気持ちで言った台詞なのか読み取れず、少し戸惑いました。もっと引きの絵にしてもいいのかな? と。次ページでの給料とご飯の話にもつながりますが、主人公君の居る世界とイケてるLANDとの格差を分かりやすくしてもよかったのかなぁと思います。(例えば、『今日のメシ…』というコマでおにぎりの値段を書いたら主人公君の生活環境が分かっていいなぁと思います。)

 ぼくの読解力もあると思いますが、15ページ目についてはいまいち何を言いたいのか読み取ることが出来ませんでした。主人公の心の動きは表情から分かりますが、ヒツジとの関わりが良く分かりませんでした。ページ数の関係もあるとは思いますが、ヒツジとLANDの関わりがもう少し知りたかったなあ、と思います。

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『漫画を描きたい』作者:かずみ

 3,4ページ目がすっごく好きです。ロボットが当たり前にかわいいし、この子と主人公ちゃんが同じ世界にいる事、主人公ちゃんにとってロボットが非常に大切な存在であることがよく分かりました。というか、ロボットちゃんがいるページはどれもイキイキしていて、登場キャラクーの”生”がとっても伝わってきます。

 それと漫画全体を通してカメラが大胆に動いてくれるので読んでいて飽きが来ないというか、構図そのものを楽しみながら読むことが出来ました。

 2ページ目の『あー脚パンパン スニーカーで 行けば良かった~~』は前後の流れも合わせて、主人公ちゃんってこんな感じの子なんだなぁと伝わってきて、一気にキャラクターへの愛着が湧く台詞でした。

 ただ、コマ割りや吹き出しの使い方などで一部、目の止まってしまうところがありました。例えば、1ページ目では3コマ目から4コマ目にかけての吹き出しが下に長く伸びすぎているために、目線が『絵がきれいで――』→『よかったら――』で止まってしまい、右下のコマには目がいきませんでした。2コマ目と3コマ目を整理して吹き出しの位置関係をまとめるか、4コマ目でお友達の表情が見えるなどすると右下のコマに視線が誘導されるのかなぁと思いました。(一コマ目の台詞を『この漫画好きって言ってたよね?』とかにしてもいいのかな……)

 一方で6ページ目のコマ割りは大胆に左縦ゴマを使っているにもかかわらず、正しいコマ順で読むことが出来て大変驚きました。また、7ページ目の見せ方はとても分かりやすくかつ印象的で、台詞やモノローグのない静かなページだからこそ最終ページの「あふれ出てる感」が演出されていてグッときました。6ページ目の小回りが比較的細かく、文字量も多い点とのギャップが際立っていて非常に良かったです。7ページ目と8ページ目の流れはTwitterでバズりそう(?)。

 アピールでひらマンメンバーに向けた漫画だ、と書いてありましたがぼくは別段、これはひらマン用に描かれた漫画だ、とは思いませんでした。『漫画が描きたい』という締めなので何か表現したいことがある人にとっては共感性のある漫画だと思います。

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『人の心が聴こえていた頃の実体験話』作者:kinositamarisa

 まずタイトルのインパクトに驚きます。『人の心が聴こえていた頃の実体験話』と言うことで、『思えばよく予知夢を見る子供だった』というモノローグの入りも合わせて、なんていう漫画なんだ!と衝撃的な導入でした。

 5ページという比較的少ないページ数でまとめているためか、テンポよく話が進んでいるように感じます。男性向け漫画を描かれているからかキャラクターの描線がどこか中立的で、ややもすると浮世離れしすぎてしまうような内容の漫画でもそこまで読者(ぼく)から乖離することが無く読み進めることが出来ました。

 どのページもコマ数が多くなく、情報量も管理されているようで非常に読みやすかったです。その反面、吹き出しに口(>)が付いていなかったり、台詞回しが少しわかりにくかったり(4ページのモノローグ『大人数や距離が――』や、5ページの『大人になり 人間以外に没頭する――』など)する部分があり、一瞬「あれ、これは誰の台詞だ?」と目が止まる瞬間もありました。

 加えて、主人公君は物語の冒頭から終わりまでストレートに思考を展開させており、最終ページでの『人の心がぜんぶ覗けてしまってたら――』に込められた心情が、作者の意図したより読み取れていないような感覚があります。主人公君が最終コマで見せた表情に含みがあるだけに「くっそー、どこを読めばここにつながるんだ!」という感覚が強く残りました。

 ネームに関するアピールで書かれていることそのものはしっかりと伝わってきました。一方で、ほぼ一言に近いアピールだったのでこの漫画で言いたかったことってこれだけなのかなぁとも思います。以下は単純に興味本位なのですが、本にするときは基本的に4の倍数(あるいは偶数)でまとめるものだと思っていたので、この漫画を5ページにした意図が気になりました。どこか、具体的に『○○に向けて描いた』という方向性があるならぜひお伺いしたいです。

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『タダ券の完全勝利』作者:盛平

 ぼくが読みなれていないこともあってか、コメディ的にちりばめられた少女漫画的意匠がとても新鮮で楽しく読むことが出来ました。絵についてもどのコマにどういう表情のキャラクターがいるのかが非常にはっきりしていて、ストレスフリーと言うか、見せたいものがストレートに届いている感じがしてこの漫画をどう読めば良いのかがストンと入ってきました。(これは真に単なる感想ですが、3ページ目の『よし!』のコマ展開が非常にアニメ的に感じました。なんでかは上手く説明できないデス……)

 物語としても、主人公が友達の相談に乗る中で「いつものことか」的に相槌を打っていたら話の流れが変わり、ダダダダーッと展開するあたりが気持ち良かったです。扱っている内容も読み方によってはヘビィなものになると思いますが、時折挿入されるコミカルな描写もあり、気落ちすることなく読み進められました。

 コメディ要素によってそこまで気にならなくなっていますが、タダ券については急に出てきた感があるなぁとも思いました。キーアイテムだと思うので、もう少し前に出てきていて「どこでつかうんだろう?」と期待感を持ちながら読み進められたらまた一味違った漫画になるように感じます。

 1ページの4コマ目に描かれた手は恐らくお友達のモノだと思うのですが、顔が出てきていないこともあって「お友達の手だとは思うけど、あってるかな」と少し目の止まってしまいました。早めにお友達の顔が出てきたらどう感じたかなぁと気になります。2ページの中段のコマについては(ストレートな書き方になって申し訳ないですが)公園?だとは思うのですがどういう場面になっているのかよく分かりませんでした。

 それと、8ページからは別の漫画(別のキャラクターによるストーリー)が始まっているのでしょうか? 髪型は7ページ目までに出てくるお友達に似ているような気がしますが、ここからは作者である盛平さんのお話のように思えます。(もし、1ページ目から盛平さんの話であり、ぼくがキャラクターおよび主人公を取り違えていたら申し訳ありません。人称が異なっているので別の人物として認識いたしました)

 もし別の次元の話が展開されているのなら、空ページや空ゴマを挟んだり、余白を塗りつぶしたりして『前ページまでの話とは違いますよ~』という合図があったら助かったかなぁと思います! 自己紹介漫画としては非常にすんなりと馴染んできて、盛平さんのことを勝手に分かったような気になりました(笑)

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『懺悔室の清水くん』作者:清水しの

 めちゃくちゃ漫画としてのまとまりが良くてびっくりです。モノローグや吹き出しの余白が多めにとられていて超ストレスフリーに読むことが出来るので、多少込み入った内容になっても躓くことが無く読むことが出来ました。

 タイトルと筆者がクレジットされている中で、『清水くん』という固有名が著者名と被っているので「このキャラは作者の何かを取ってきた子なのかな?」という想像も働きやすく、ある種の自己紹介漫画だろうということが無理なく理解できたと思います。

 決められた分量の中で『おわり』を打てるような物語にして下さい、という課題文をうけてのことだと思いますが、16ページの中で風呂敷を開いてオワリ!と言うことではなく、きちんとオチをつけてこの漫画そのものだけでお話としてまとまっているのもすごいと思いました。それでいてシリーズものにできそうな構造になっているのも驚きます。個人的に最終ページの『あ うん』があるのめっちゃ好きです。どっちもちゃんとクズっぽいのに、主人公君だけ負けた感じになっている……。「いいな」で止めていて好きとか可愛いとか書かない辺りも良い。

 うーむ……。こまった。

 強いて言うなら、スマホがこまめに描かれているのでどこかのタイミングで薬師さんと弟君とのゲスっぽいやり取り画像とかあるとよりダメさが際立ってよかったのかなぁとか思います。あとは人の秘密を聞くときの面白さって聞きだす過程にもあると思うのでそこを描くとか……?

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おわりに

  現時点で提出が確認できた5名の方のネームについて感想を書きました。どの作品も(当たり前ですが)熱量をもって描かれているので感想も、やはり、それなりの量にならざるを得ません。今回はこんな感じで書きましたが、スタイルについては一年を通して右往左往すると思いますのでお付き合いいただければと思います……。

 感想についてはできる限りネームを読み直し、ウソのない範囲で書くように努めているつもりです。が、それでも至らないところはあると思います。もし、内容ではなく「書き方が気に食わない」とか「こういった言い方はしないでほしい」などあれば伝えてくださればと思います。可能な限り誠心誠意対応させていただきます。また、ここで書かれた内容について「それは違うわい! このすっとこどっこいが!」などあれば是非お話が出来ればなぁと思っています。

 それにしても、読んで感想を書くだけでこの時間とエネルギー消費ですから、日々漫画やイラストなど創作を行っている方々への尊敬が増すばかりです。9月から本格的な授業が始まりますね。

 現時点ではまだ初めの一歩も踏み出していない状況ですが、一年間もがきながら頑張ろうと思います。

 それでは、また次の感想でお会いしましょう。

 興味のある方は前回の記事も是非お読みください。

toraziro-27.hatenablog.com