とらじろうの箱。

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【放談】映画『Fantastic Fungi』、見てきたヨ。【NO.12】

はじめに

 9月24日より公開された『Fantastic Fungi』(邦題:素晴らしき、きのこの世界)を見てきました。上映館がかなり絞られているので、ご興味ある方はぜひ公式ウェブサイトよりご確認ください~。

kinoko-movie.com

タイムラプスならではのワクワク感

 きのこといえば食べ物! 一般的には、それ以上でもそれ以下でもないという場合が多いかと思います。結論から申し上げますと、そういう方には是非見ていただきたい映画でした。取り上げられるトピックは、きのこの書籍を手に取ればどこでも触れられているような基本的なものが多いのです。しかもそれを個性豊かな出演者たちが魅力たっぷりに語ってくれているので、見ているこちらも楽しくなってしまいます。きのこ世界への入り口として、とても分かり良い内容だったと思います。

 他にもタイムラプスを基礎にした映像の数々がとてもダイナミックで蠱惑的でした。スーパーで目にするきのこは、いわゆる「子実体」と呼ばれるフェーズにある状態です。自然の中でも子実体は見つけられますが、実を言うと、きのこの一生において子実体でいるのはとても短い時間なのです。きのこは一生の多くの時間を、菌糸と呼ばれる状態で主に地中や枯れ木の中で過ごしています。

 映画では、菌糸から始まるきのこの成長ダイナミズムを、タイムラプスを用いた映像でとても魅力的に映し出していました! ビルの建設を早送りするかのようにニョキニョキと傘を伸ばすきのこ!! これらの映像は眺めているだけでワクワクするような楽しさがあります。シムシティ好きにはおススメできます(笑)

識者のおススメコメントが面白い

 この映画、きのこ初心者の方にはとてもおススメなのですが、いわゆる専門家と呼ばれる類の人々にはあまり居心地がよくないのかもしれません……(苦笑)。というのも、映画で語られる情報の一部には不確かなものが多いのです。スピリチュアルな内容も含まれますし、科学的な正しさという観点では多少の危険をはらんでいました。

 おもしろいことに、映画の宣伝を頼まれたであろう人々の一部からも『(ツッコミどころはありますが)』などのエクスキューズが添えられています。

 パンフレットの中でも、研究者の保坂健太郎さんからは『(映画でたびたび登場する黄色の生物は)変形菌であり、菌類でもなければきのこでもない』と注意が飛んでいます。また、邦題は特に問題で『Fantastic Fungi』つまり「素晴らしき、菌類」となるべきものが『素晴らしき、きのこの世界』と主題がすり替えられています。これは監督であるルイ・シュワルツバーグの意図とも大きく異なっていることがパンフレットで語られています。

 このように、映画を盛り上げる立場にある人々が、結果的に水を差すようなコメントを残しているのです。少し不思議な現象ではありますが、きのこを語ることを求められる人々はこうなってしまうのが必然なのかもしれません。きのこという言葉はそもそも学問的なモノではなく、ひどく印象的であいまいなものです。それを考えると、きのこを専門に活動する識者の方々が、きのこを取り扱った映画を盛り上げながらも同時に枷をハメなければならないことそれ自体がとても象徴的で面白く映りました。

おわりに

 ふたを開いてみると実に様々な所へリーチし得る映画でした。

 ナレーションのブリー・ラーソンは『キャプテン・マーベル』の人だし、メインで出演していたポール・スタメッツは映画『スタートレックディスカバリー』シリーズに登場する宇宙菌類学者ポール・スタメッツ大尉の元ネタになった人のようです。

 びっくり。

 映画では食品としてのきのこにはほとんど触れられなかったにもかかわらず、パンフにはきのこのキッシュときのこのミートローフのレシピが乗っているし、もうめちゃくちゃです。きのこに興味のある方はぜひ、肩の力を抜いて見に行ってみてはいかがでしょーかっ!!

 ではでは~。

 また次の記事でお会いしましょう。