とらじろうの箱。

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【ひらめき☆マンガ教室】第9課題・取材して描く 完成稿編【第4期】

第9課題・取材して描く

前置きがあるので、読み飛ばしたい方は目次からお好きな場所にお飛びください。

はじめに

 ひらマン4期聴講生のとらじろうです。

 今回は第9課題において作成された完成稿へのコメントを書いていきます。

 基本的には読んでいて感じた違和感や、視線誘導の不和などについての言及が多いです。個人の感覚による部分が大きいため、物語の主張や内容への言及は抑えるように心がけています。それでもマンガは消費者によって読まれるものなので、一部についてはぼく個人の感想が含まれます。

 以下に、本エントリーの構造を示しました。

  1. 作品を読んだ環境
    PCで読んだとか、スマホで読んだとかそういう奴です。コマのサイズ感やめくりの印象などは読書環境によって違いがあるため明記しています。
  2. 作品へのコメント
    作品へのコメントを書きます。繰り返しになりますが、物語そのものへの言及は意図して控えています。

 この記事に書かれたことはあくまでぼく個人の見方です。

 どのマンガも非常に興味深く面白いので是非、下記リンクからお読みください!

school.genron.co.jp

作品を読んだ環境

 chromeブラウザでスクロールを利用して読みました。ページ毎に拡大される形式では読んでいません。見開きが一望できる環境で読んでいます。

作品へのコメント

『わたしはイルカ』作者:かずみ

 すごく印象的な1ページ目ですね! 線も可愛らしいですし、一枚の絵としてすごくまとまっている気がします。一方でマンガとして身構えていると、どこをどう読んでいいのかが難しく感じました……。

 演出として配置された映画フィルム状のコマは斬新で、なるほど! と楽しかったです。とはいえ、読者に読んで欲しいコマとして配置したのかどうかは判然とせず……。「このマンガはどうやって読んだらいいんだろう?」と迷ってしまいました。最終的には読める文字が配置されていたことと、ページ全体にトーンが張られている中でフィルム部分が白く、明らかに目を引くような作りになっていることを根拠に「おそらく読むのだろう」と判断しました。すると今度は右上に配置されたモノローグへ視線が誘導されず、フィルム部分とモノローグ部分を視線が右往左往してしまいました。さらにはフィルム部分の会話とモノローグとが内容面で八割ほど被っていて、同じ話を二度読むことになり、多少ストレスがあったように思います。

 ネーム原稿のアピールによると小学生を想定読者としているとのことですが、それなら文字の行間をもう少し開けたり、ルビを振ったりともう一工夫あっても良いのかなという印象です。また、これらを考えていくと『小学生』という想定はそれなりにアバウトなのかなとも思いました。1年生と6年生では読むことのできる漢字の量は異なりますし、理解できる表現の複雑さもかなり幅があるかと思います。

 参考→『小学一年生』 | 小学館の学習雑誌

 完成稿のアピールでは『読者の年齢を決めず、短編集を買ってくれるような方なら読めるかも』とのことでしたが、その人たちが具体的にどんな人たちなのか気になりました。

 3ページでの視線誘導に少し違和感を覚えました。2コマ目から3コマ目へ移行する部分です。女の子の靴に黒が使われているため、視線がそちらに動くことは動きます。でそれでも2コマ目のイルカが、右から左下に向かう線の流れで角材を持ち上げているため、4コマ目の『夢なら イルカと――』に視線が近づきすぎて上手く3コマ目に誘導されないことがありました。角材の線が太かったりはみ出ていたりして目を引いていしまうこともあると思います。1コマ目から2コマ目への誘導が黒色によって凄く綺麗に行われているのもあって、ここは気になりました。

 4ページにある『心細かったよ~』の部分が初見時には噛み砕けませんでした。二回目以降には書き込まれている汗に気が付いて、理解ができました。おそらく、冒頭で夢だと明言されていることに加え、イルカがすごくかわいい印象で描かれていることで不安が読み取れずに誤読してしまったのだと思います。他にも4ページまでに受けた最も大きい印象は急に現れたイルカに対する驚きで、次のコマではそれが過度な演出で処理されていたので笑い(リラックス)だと読み取り、女の子が感じていた不安などを上手く受け止めることができなかったのかもしれません。

 ほかの原稿でも何度か指摘されていたことですが、トーンにあまり意味のないコマが多いのかなぁと感じます。ある講義の中で『不安だからつい使ってしまう』と発言していたように記憶しています。十分すぎるほどに魅力的な絵柄を持っているし、多少細かいとはいえ後半部のコマ割りはすごく読みやすいし、そこまで不安に思わなくていいのかなぁと、個人的には思いました。

 意識的なトーンの使い方については、ゲスト講師として登壇もしていた大井昌和さんがご自身の放送で詳細に説明していらしたので、もしかしたらそちらが参考になるのかも……!!

シン・マンガ工学 細かすぎて伝わらない漫画の描き方完結篇「紙の砦」を築くために 大井昌和のコミックガタリー シラス版! | シラス

 全体的に絵を見る快楽があってとても楽しかったです! イルカがすごくキュートだし、リボンをしていたり眼鏡をかけていたりとユニークな姿が統一感を持って描かれているので「少し不思議」な感じをたくさん味わえてうれしかったです。前半部では多少詰め込みがちに見えたコマ割りと文字量も、後半部では抑えられているように感じました。読み終える際の快感やスピードの上がり方は非常に気持ちが良かったです!!

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『顔』作者:こぐまあや

 全体を通してすごく読みやすかったです! 展開もいい意味で予想を裏切るもので驚かされながら読み進めました。キャラクターもかわいらしいですし、時折使われるデフォルメ顔が愛嬌にあふれていて味わいがありました。

 意図的にコマ割りの工夫で読みやすさが格段に増しているように感じた一方、メリハリは小さくなってしまったのかなと思いました。間のコマが少ないのもあるかもしれません。

 全体的な書き込みとしては統一感があり、違和感も少なかったです。8ページの1コマ目や15ページの最終コマ、25ページの最終コマなど人物が遠くに立つ場面や背景に黒が使われている場面では少しキャラが背景に埋もれている感じがしました。それでもほかの部分が成立していたので、流れで読んでいると気にならない程度なのかなとも思います。

 時折トーンの貼り忘れや塗り忘れのような場所が見受けられたのが気になりました。演出で白く抜いているのか、ケアレスミスなのか判断が付きにくかった場面もあったように思います(28ページ1コマ目など)。

 途中テンポに変化がなく、少し疲れてしまうような印象は持ちましたが、それでも32ページは十分に読み切れるマンガでした! 目線の誘導などで戸惑う部分も少なかったですし、すごく楽しんで読みました~!!

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『バーバリライオン』作者:桃井桃子

 後半の展開がとても刺激的で驚きを感じながら読み終えることができたように思います~! 『藍』のズレた感じも怖さにつながっていて、ギョッとしました!

 全体的に前後のつながりが唐突に思える場面が多いようにみえました。2,3ページ単位では意味が通る一方で、4,5ページ単位で見ていくとつながりの分かりにくい部分があったように思います。回想シーンで何度も『まちがいさがし』について言及されますが、こうする意味が単にマンガを読んでいるだけでは分からないように感じました。他には、10ページまでの展開と10ページ以降の展開のつながりもぼくには上手く読み取ることができなかったです。

 全体的に『藍』の言葉遣いに違和感がありました。

 ネームでのアピール文を読むに、キャラクター設定が作り込まれているがゆえの表現なのではないかと推察します。とはいえ、マンガに描かれた情報だけで考えると単に言葉の意味がとりにくいだけの場面もあったように感じました。特に今のマンガでは二人が二人とも少し世間からズレたキャラクターとして造形されているので、この子達がノーマルな世界観なのか、そうではないのか、読者に判断が付くようなシーンがないために違和感を持ったのかもしれないです……。

 想定媒体が分からないので難しいのですが、百合姫なら中盤のシーンはもう少し露骨に描いていても良い様な印象を覚えます。ぼく個人の感覚では今のままでもとても魅力的なのですが、今の百合姫と比較した場合には少しあっさりしているのかなと感じました。

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『球』作者:なないつ

 冒頭の文字が行間も無く、画数の多い漢字がつながっていたので、正直、「これ、読むのストレスがあるなぁ」と感じてしまいました。ですが、絵は非常に力があるし印象的なものだったのでページをめくることができました。とてもいい絵だと思いました。

 完成稿だと思って読んでいると、狙っているのか技術の問題なのかを上手く分けて理解することが難しく、特に笑いになる様な場面はどう読めば良いのか混乱する印象がありました。

 能のお稽古とパッチワーク講座が田舎の記号になるのか、少し疑問です。

 文字の面で全体的に行間が狭く、画数の多い漢字が多かったのでストレスが強かったように感じてしまいました。途中途中で挿入される新聞記事などは、どの情報を受け止めればいいのかがすごく分かりやすくてストレスなく読めました! リズムを変えるギミックとしてもちょうどいいタイミングで入ってきたように思います。

 18ページからの展開はとても気持ちが良かったです! 文字も減り、次々とめくりを促すような展開が続いていたので最後まで勢いを持って読み終えられました!

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『ホリ・ゲノム』作者:ahee

(HPの仕様で完成稿タイトルと異なるページタイトルがついています。)

 薄い本(同人誌想定ってことですよね?)ということで、1ページ目が読者の興味を引くシーンとして成立しているのかの判断は、ぼくには出来ませんでした。2,3ページですぐに物語が動いていく感覚は読んでいてストレスが無く、読みやすかったです。取り扱っているテーマが分かりやすいものであることも関係しているかもしれません。

 ぼく個人の要素も多分にあるのですが(カタカナの人名が苦手)、どのキャラが誰で誰の話が展開されているのか把握するのが難しかったです。そこがクリアできていた2回目以降の読書体験にはなりますが、13ページまでの展開はコマ割りは細かいものの間のコマが多く、文字量が少なかったためにとても読みやすくて心地よかったです!

 キャラが増えてすぐに時間が動くこともあって、15ページからの台詞はついていくのが難しいように感じました。特に天使の像になってしまう子は名前も出てこず、セリフも自分に向けたものとララシャに向けたものが混在しているので(24、25ページなど)なかなかハードルが高いような印象を持ったのだと思います。

 序盤中盤終盤と、絵で魅せる場面が入れ込まれていてリズムよく読み進めることができたように感じました! とても気持ちが良かったです。絵のニュアンスもすごく個性的で、楽しかったです。
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『人間嫌い克服ロボット ふわの!』作者:俗人ちん

  テンポが良くスルスルと読めたのですが、比較的同じリズムが続くために少しのっぺりとした印象を持ってしまいました。それでもすごく面白かったです!

 全然ツッコミが無かったのですが、画面の中にいる女の子と飛び出してきた女の子のグラフィックが違うのはなんでなんでしょう……。未来だから?

 女の子と男の子の振る舞いがはっきりしていたので、文字量の割に困惑することなく読み進められたように思います。長台詞も少なく、会話のテンポが良かったこともあるのかもしれません。

 2ページのバストアップや7,8ページの女の子を見せるシーンなどは意図的に入れているということで狙いも明確だし、キチンとその効果が表れているように感じました!

 オチも意外で面白かったのですが、一度大ゴマなどでリズムを変えているとよりすっきりとした読後感を得られたのかなぁと思いました。

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『美術のせんせい』作者:のり漫

(HPの仕様で完成稿タイトルと異なるページタイトルがついています。)

 なるほど! おもしろい絵面で勢いもあるので、星先生の登場では笑いました!

 正直、どう読めばよかったのか分かりませんでした!!(ゴメンナサイ)

 6ページと短いので読み切ることはできるのですが、これを読んでどういう気持ちになればよかったのかが分からなかったです……。

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おわりに

 今回は『取材して描く』とのことで、その他と比べ完成稿のページ上限が多い課題でした。その中で多くページを使いながらも完成稿をあげてきた人たちには驚くばかりです。すごい。

 どの作品も格段に読みやすくなっていて、いつも完成稿を読む瞬間が待ち遠しいです。取材で得られた情報をどう取捨選択するかというのも、ネームと完成稿では異なっていていろんな見方ができる課題だったように思います。

 受講生たちの話を聴いていると最終講評回が視界に入る中で、「取材する」という経験が生きている人もいるようです。講義も応用編に入り、講評回での指摘もすごく具体的なものが増えてきました。

 現時点(2021年8月15日)では第10課題をすでに終えており、残すは最終課題のみであります。

 とても楽しみです。

 では、また次の記事でお会いしましょう。