【ひらめき☆マンガ教室】第5回課題・『主感情』と『副感情』を描く 完成稿編【第4期】
第5回課題・『主感情』と『副感情』を描く
前置きがあるので、読み飛ばしたい方は目次からお好きな場所にお飛びください。
はじめに
ひらマン4期聴講生の「とらじろう」と申します。今回は第5回ネーム講評会を受けて製作された完成原稿へのコメントを書いていこうと思います。
以下に、本エントリーの構造を示します。以前書いた通り、第二サイクルに入ったことを受けて以前と記事の構造が変わっています。
- 作品を読んだ環境
PCで読んだ、とか、スマホで読んだ、B5に印刷して読んだ、とかそういう奴です。 - 作品へのコメント
エントリーの本丸です。作品へのコメントを描きます。着想編で取り組んでいた『伝わること』を第一に意識しています。
どのマンガも本当に面白いです。この記事をお読みいただいた巡りあわせもございます。是非、下記リンクから正規受講生の作品をお読みください。
作品を読んだ環境
chromeブラウザで、スクロールしながら読みました。
作品へのコメント
『ゆきのひ』作者:藤原白白(同人誌Bチーム)
冒頭から「ででん!」とお猫様がいたので、「お、まぁとりあえず読んでみるか」とページをめくらされました。1ページから主要キャラクターと季節と、なんとなくの状況が分かってストレスが無く、スムーズに読み進められました。冒頭の作りとしても、読者を力技で作品に寄せてこようとするのではなく、読者の感覚で入り込めるように文字が少なかったり絵で説明していたりと、とてもストレスが少なく感じました。
シンプルで太めの線を使っていることがあり、背景もそれに合わせて比較的書き込みを少なくしたのかな、と感じました。それでもねっぷの髭や口元にトーンを貼るなど、画面が白くなり過ぎない作りになっていたので、不思議と情報量のあるマンガとして読むことができたと思います。初見時に気になったのは9ページ1コマ目のセミと木くらいで、全体としてはすごくまとまりを感じながら読んでいました!
強いて目の止まった点をあげれば、4ページでした。『おれは いつもより――』の部分です。読んでいてなんとなく雰囲気を捕まえられるですが、ねっぷはこの時どんな気持ちだったのかなぁと迷ってしまい、読んでいて少し距離を置かれてしまった印象を受けました。あと、同ページ2コマ目の『プルニャーン』です。とても可愛らしく微笑ましかったのですが、ねっぷの効果音としては少し柔らかすぎるような気がしました。……でも、ずっと眺めていたらこれでいい気もしてきました。ここは一番ねっぷの気持ちが複雑な所だと感じたので、『プルニャーン』が無く『カリカリ』だけになっていると、読み方として(師走の翁さんの授業で説明されていた)ループした時間を感じるようになり、複雑な思いを感じさせるのにちょうどいい滞在時間になる様な気もします。
ページ単位でみると最終ページはそこそこ文字量の多い部類だと思うのですが、やはりここまで読まされていると全く気にならないものですね。すごく心地よく読み終えることが出来ました! 写植もすごく意図を感じて、統一感もあったし、とても読みやすかったです。
school.genron.co.jp
『白鳥湖の畔で』作者:こぐまあや(同人誌Bチーム)
線がきちっと閉じていて、非常にかっちりとした印象を受けました。背景の描き方もそうですが、紙に印刷されてインクのにじみが出ると多少読み心地が変わるのかなぁという雰囲気を抱きます。このかっちり具合もあって1コマ単位で見ると目がふらつくことが少ないように思いました。そのため、コマの中の情報が比較的しっかりと読み取れるマンガになっているのかなぁと感じます。
3ページ2コマ目の指ハートや4ページ下段真ん中コマの手の感じなど、動きの切り出し方にすごく可愛らしさがあって、キャラクターに愛着が湧くような部分を取り出すのがうまいな! と思いました。正直に書くと、3ページ中段に来るまでは主人公の女の子に少しとっつきにくい印象を持っていました。ですが、『イラッ』の描き方と表情を読んでグッと親しみがわいたように感じました!
13ページの演出がとても素敵です! 中段の絵もすごくいいですし、ここが見せ場なんだ、と読んでいて自然と分かる構成になっているように思います。マンガとしてもここで終わるのではなく、その後の主人公を見せてくれたので読後にはすごく読み切った感がありました。
一方で、全体的にみると16ページで納めるために少し演出(受けの演技)を省略した部分もあるのかなぁとも感じました。回想が終わった後のシーンでは、特にそう感じました。主人公の子としては回想と10ページ1コマ目の間に心の変化があるように読んだのですが、今の作りだとその余韻を読者が感じる間がなく、シームレスに主人公が決意をしているように見えてしまいました。
すごく読みごたえのある16ページでした! 背景の書き込みが多いこともあり、たくさんの情報を受け取ったように思います!!
『私と君と時々あいつ』作者:盛平(同人誌Cチーム)
百合になってる⁉ 女の子たちがすごくキャラクターとして固まっていて、動きに変なところが無くて安心しながら読めました。造形も可愛らしくてアップの映える絵だなぁという印象です。アピール文にもありましたが、引きや少しの引きなどがバランスよく配置されていると、より効果的にアップが効いてくるのかなぁという気もしました。アップが映えるからこそ、引きとのバランスが取れてくると絵の力だけでも読んでいてさらに心が動かされるのかもしれないと思いました!
場面に合わせてキャラクターの服装も変わっていて、そういう部分に敏感な読者からすると、それだけでも楽しめる部分があるのかなと思います。ぼく個人としても、服装からはキャラクター性を感じ取れるので、このような変化があるとより楽しく読めるように感じました! その分、作画カロリーは増えてしまうのかもしれませんが……。
絵としてのインパクトや吹き出しが白黒反転しているなど、明確に強調されていて、1ページの鳥はすごく目を引きました! 狙い通りだと思います。一方で、ここがすごく目立っているために、2コマ目の『じゃーん』に視線が誘導されず、少なくともぼくが一番初めに読んだ際にはこのコマを読み飛ばしてしまいました。とはいえ、読み飛ばして話の流れを見失ったわけではありませんでした。
3ページ下段の『ムリめ~』の絵に少し不思議な印象を持ちました。話の流れから、これが誰の手であるかは間違えないと思います。とはいえ、前のコマと手の位置が大きく変わっているので、このコマは少しカメラを引いて腕と体の位置関係が読み取れる構図になっていると、よりストレスなく読むことができるのかもしれないと感じました。
5ページからの流れがとても良かったです! 吹き出しが減り、女の子の気持ちに寄り添いながらモノローグと絵が続いていくので、読んでいてすごく持っていかれる気がしました!! 時間がなかったとのことですが、一読者として最後に一度この子(もしかして、マンガの中で名前出てない?)の笑顔を大きく見たかったです!!
『いつかあの日』作者:横たくみ(同人誌Bチーム)
回想から始まり今に戻るという流れの中でお父さんが明確に老けていて、とても時間の長さを感じるマンガでした。一方でコマは大きく読みやすいので、読むのにかかる時間と作中の時間とが奇妙に行き違っていて不思議な感覚です。それでいて温かい読後感があり、ほっこりしました。
10ページという短い中にキャラクターの心情を感じさせる演出がしっかりとあって、とても心地よく読めました。特に2ページの手を見つめる子供のコマやライトの光り方、加えて4ページの下段と最終ページなどは、物語の盛り上がりとたたみ方に合わせて構成されているのですごく乗っかりやすかったです。
少し気になったのは9ページの4,5コマ目にある吹き出しの位置でしょうか。特に4コマ目の『ここを…』が意図的にコマ枠に乗っているのか、なんとなく乗っているのかが分かりませんでした。というのも、ここは時間の流れが少し特殊なコマだと思ったからです。他のコマみたいに前後の時の流れが階段のようになっているのではなく、折り紙をしている比較的連続性の強いコマだと感じました。したがって、意図的にコマをまたぐような吹き出し位置にすることで連続性を強調しているのかどうか、迷ってしまったのだと思います。
2ページの間白を失くす構成など、すごくしっくりきます。意図的なモノかどうかわかりませんが、非常に読みやすい上に意味を感じとることができるマンガで、とても楽しめました。
『帰ってきた! となりのお姉ちゃん』作者:つまようじ(同人誌Bチーム)
比較的ゆっくりとした重めの雰囲気で始まりながら、2ページ下段では大きくケルのマヌケな(?)表情を見せてくれていて、すごく懐の深いマンガだと思いました。この時点で「このマンガはシリアス全振りじゃないんだな」と感じたので、リラックスして読み進められたように思います。
ギャグ展開にも流れと理由があり、ぼくにとっても、とても読みやすかったです。『色んな菌殺す君1号』などマシンの名前もいい意味で馬鹿っぽくてとても安心しました。展開や内容はすごくハチャメチャなのに、やはり冒頭の2ページで世界観を把握できたのが大きいのかなぁと思います。そのためか違和感なく最後まで読むことができました!
課題を意識していたからか、ギャグテイストと感動テイストがマンガの中で的確に描き分けられていて(トーンの使い方や、目の描き方など)比較的読む目線が動きがちなマンガだと思うのですが、それに振り回されることなく、暖かな読後感を待ちました。
個人的なことを強いて言えば、最後はもう少し続きを読んでみたかったなぁと感じました。あるいは、最後の男の子の気持ち(ふがいなさや覚悟?)をじっくり味わいたかったなぁという思いを持ちました。10ページ右下のコマの顔がすごく良いので、最後の『次は、俺が…』に続けて一歩前に踏み出したような雰囲気を感じたかったのかもしれません。
締めるべきところがきちんと締まっていてとても楽しみながら読めました!!
『生まれてこのかた』作者:ahee(同人誌Cチーム)
印象的な救急車のコマから入り、主人公が一目でわかるページ作りになっていて混乱なく入っていけました。そこそこ危ない感じのことを、独特の距離感で描いてあるので正直ぼく個人としてはこの白さは殆ど気になりませんでした。白くするなら白くするで意図的に統一されていることももちろんあると思います。
主人公が世界観の中で特別目立つマンガではないので、意図的なものかもしれませんが、モブと主人公の書き分けが少し明確でないようにも見えました。特に9ページのモブキャラクターは(話の流れとしては混同しませんが)、絵柄としてパッと区別がつきにくい様な印象を受けてしまいました。
物語の大きな枠組みが入り組んでおらず、救急車と善人の関係でマンガが完結しているので今までのマンガに比べると分かりやすさが増しているように感じました。一方で途中途中の主人公の行動やその動機については、場合によって分かる人とまったく分からない人でくっきり別れてしまう描き方になっているような感覚も持ちました。……嘘ついたかもしれません。読み直してみると、やはり分かるように作れているようにも思いました。ごめんなさい。
文字の級数も大きく、一吹き出し当たりの文字数も抑えられいてすごく読みやすかったです。説明も文字に頼り過ぎず、絵と演技で伝える部分が多く、時間をかけなくても情報を読み取れてストレスがありませんでした。明るい話とは言えない内容だとは思うのですが、読後感は不思議と重くなり過ぎず、ともすればすっきりとしたものでした。
『異性恐怖症の先輩の婚活をプロデュースした件』作者:のり漫(同人誌Aチーム)
(ひらマンHPのタイトルが『プロデ"ィ"ース』になっているのですが、これはもう変更不可能なんでしたっけ……?)
お母さんの言ってることがきちんと今の時代の価値観とは違うんだよ、っとキャラクターのレベルでわかるように描いてくれていて、変に不安を抱えることなく入っていくことができました。そのほかのレベルでも主要キャラとモブキャラクターが、どう見ても分かるように書き分けれていて落ち着いて読むことができました。途中で藤原さん路線に行くのかな? などの妙な勘繰りをする必要がなく、読者として目線がブレる必要が無かったからこその安心感なのだと感じました。
キャラクターのリアクションにメリハリが効いていて、文字量が多くなったりコマ割りが細かくなったりしていても読み取るべき情報が抜き出しやすいように思いました。ぼく個人の感覚で言うと、11ページなどは小回りが細かくて少し構える感覚を持ってしまうのですが、それでも前後の話をつなげて読むことができました。
物語の締め方ものり夫に彼女が出来て終わりではなく、その一歩先を描いた上でふふっと笑えるようなオチになっていたのでとても気持ちよく読み終えることができました!
おわりに
伊藤剛さんによる第5回課題に対する完成稿について、コメント記事を書きました。
いやぁ、毎回書いている気がしますが、どんどんマンガの完成度が上がっていくので本当に驚くばかりです。特に今回は課題自体が入り組んでいて、取り組むことそれ自体が難しいものだと思うのですが、すごいです。
負けてられないなあ(何に?)
というわけで、「第5回課題・『主感情』と『副感情』を描く 完成原稿感想編」でした。
では、また次の記事でお会いしましょう。