とらじろうの箱。

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【ひらめき☆マンガ教室】第4回課題・キャラクターを作る 完成稿編【第4期】

第4回課題・キャラクターを作る

前置きがあるので、読み飛ばしたい方は目次からお好きな場所にお飛びください。

はじめに

 ひらマン4期聴講生の「とらじろう」と申します。今回は第4回ネーム講評会を受けて製作された完成原稿へのコメントを書いていこうと思います。

 以下に、本エントリーの構造を示します。前回書いた通り、第二サイクルに入ったことを受けて以前と記事の構造が変わっています。

  1. 作品を読んだ環境
    PCで読んだ、とか、スマホで読んだ、B5に印刷して読んだ、とかそういう奴です。
  2. 作品へのコメント
    エントリーの本丸です。作品へのコメントを描きます。着想編で取り組んでいた『伝わること』を第一に意識しています。

 また、今回は既定ページ数をオーバーした提出作品がありました。その作品に関しましては、ひらマンルールを参照し本記事では触れていません。その作品も含めて、本当にどのマンガも面白いです。この記事をお読みいただいた巡りあわせもございます。是非、下記リンクから作品をお読みください。

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作品を読んだ環境

 chromeブラウザで、スクロールしながら読みました。

作品へのコメント

『開幕!奴隷生活!』作者:俗人ちん

 線が統一されていて、パッと見たときにすごくまとまった印象を受けました。ところどころめくりの手前で唐突に感じる展開もありましたが、それ以上に全体のテンポが良く、非常に楽しみながら読むことができたと思います!

 1ページの作りも世界観とキャラクターの雰囲気が十分伝わるものになっていて、設定や立場に違和感を持つことなくマンガに入っていけました。強いて言えば、博士と仮面の男の位置関係が分かればより混乱が少ないかなぁと思いました。

 マンガにおけるツッコミの作りに詳しくなく、あくまで個人の感覚になってしまいますが、7ページで『どこがじゃ』『何…そのお礼の言い方…』『奴隷だし やはり暗い過去が…』と続くところは、どこかでツッコミ主の顔が見えたら落ち着いて読めるのかな、という印象を持ちました。

 正直、ところどころキャラのポーズが硬く、おや? と思う箇所はありました。ですがこのマンガ全体としてはある種の統一感があり、ざっと読む分には大きな違和感は有りませんでした。先ほども触れたように、ペンの使い方が決められていて、きちんとルール化されている影響もあるのかもしれません。

 ルールという点で一点気になったのは、写植です。1ページ、1つ目の台詞だけ句点が付いているのは、単なるミスだと思います。ですが、アピール文を読むと想定媒体がきちんと定められているようなので、ヤングジャンプ基準に照らしてこういったものはできる限り減らしていかざるを得ないのかなぁと感じました。

 それにしても、やはり全体としてのまとまりが良く、それだけも非常に完成度が高いように感じました。内容も面白かったです! 笑った!! ネームの時と印象が良い意味でものすごく変わっていて、驚かされました。

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『イタリアンレストランのおすもうさん』作者:ハミ山クリニカ

 (色の使い方なのか、フォントなのか、余白なのか、絵柄なのか、読書環境なのか、語り手が固定されているからか、理由は分からないのですが)文字と絵を同時に読むことが、ものすごく楽に出来て、ゆっくり読もうとしてもザァッと読めてしまい、めちゃくちゃ驚きました。丸い線とお相撲さんのデザインもすごくマッチしていて、絵だけで温かいギャップを感じました。書き文字の『GOWASU!!』と短線による集中線もすごく良い雰囲気を作っているように思えます。

 PCで読んでいる影響もあってか、3ページ下段の書き文字が少し気になってしまいました。右のコマについては内容に必須なキャラクターの思考なので、この大きさなんだろうな、と感じました。一方で、左のコマの『小さく見えるコップ』は外部からのツッコミ(ある種の注意書き?)のように見えて「こんなにフォント大きくていいのかな?」と感じました。もしかすると大きさよりもフレーズの問題で、『コップが 小さく見える』のように、キャラクターのツッコミなんだとより明確に分かる語順になっているとこの違和感もなかったのかなぁと感じます。あるいは、冒頭で『私が――』と、ある種作者とキャラクターを同一視させるような導入を整えていると、気にしなくていいのかもしれません。

 上記とは別に、最終ページ最終コマの『つぶされそう……』は、おそらく一コマ目を受けての独り言だと思うのですが、初めて読んだときには上手くつなげられず、どういうことなんだろう? と少し悩んでしまいました。1コマ目から2コマ目に入って、お相撲さん二人の話がすれ違い始めたので、もしかするとそこで1コマ目とのつながりを切る読み方をしてしまったのかもしれません。

 最初にも書きましたが、めちゃくちゃ読みやすかったです。内容としても4ページでふふっと笑えるものになっていて、読後感がすごくさやわかでした。ぼく自身は普段あまりTwitterマンガを読まないので、このマンガが一般にバズりやすいのかどうかの判断はできないのですが、この線と内容ならぼく個人はRT&いいねしたいです!
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鳳凰寺セツコの胸元』作者:畑こんにゃく

 冒頭で引きコマが入り、場面が読み取りやすい中でドーン!とタイトルコール+胸文字が来るので最初2ページがものすごく気持ちよく読めました。設定の面白さもさることながら、主人公の造形がものすごくユニークで楽しかったです! 4ページ下段の『すでにひらき直り』や7ページの『アチャ~~ バレてたか~~~』などは声を出して笑ってしまいました。

 内容とは関係のないところで、すこし全体的に文字が小さいのかなぁと感じました。演出として見せるべきところがきちんと大きく描かれていて、読む分には十分読めるのですが、もう少しフォントを大きくしてくれているとより読みやすいのかなぁと思います。

 6、7ページの山本が怒られているシーンが、回想なのか今の出来事なのか少し分かりにくい印象を受けました。6ページ中段のコマで机かPCかが書き込まれていれば、どっちで読めば良いのか分かりやすかったのかなぁと感じます。

 設定そのものの面白さ以上に、キャラクターが独特にずれた行動をしているのが面白く、その上で違和感も少ないので楽しく読めるマンガでした! 激おこだった上司が最後でやたら格好つけているのとか、めっちゃ笑いました!!

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『ゆるーむメイト』作者:柴田舞美

 まず、絵の力が強く一つのマンガとしてのまとまりがすごく良いように感じました。冒頭のテンポも軽やかで、写植によってキャラクターを演出する手法も楽しく読めました。一方で、フッくんのフォントはやはり読みにくさもあり、もう少し台詞量を減らすか配置を工夫するなどあった方が良いのかなぁという印象も持ちました。特に画数の多い漢字には読みにくさを感じてしまいました。

 また、テンポの点では3ページ下段が少し重いかなぁと、気になりました。後半につながる情報としては「主人公はフッくんの稼ぎを頼っている」というものがメインのようです。例えば、『というか、稼ぎはフッくんに頼るところもあり、実態は居候に近い』『何せこいつは――』のような形で文字数を減らせれば、より軽やかなテンポで読めるのかなぁと思いました。

 要所要所で大ゴマも入り、そこの絵もダイナミックで気持ちが良いので、すごく良い気分でマンガを読み進めることができました! 細かいことにはなるのですが、ところどころ意図的なのか分からない形で吹き出しやモノローグの線が消えていたのが少し気になります。一般的には気を使った方が良い点だとは思います。ですが、これも含めてこのマンガは、キャラクターと台詞(文字)が同じレイヤーレベルにあるように見え、独特の空気感を造り出しているようにも感じたので、不思議な感覚でした。5ページの1コマ目と2コマ目の間に絵が残っているのは、どう読めば良いのか(ミスなのか)かなり気になったので、ここはコマの中に絵を入れるなら入れる、はみ出すならはみ出す、コマを統合するならするで明確にした方が良いと感じました。

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『はたらく女』作者:こぐまあや

 16ページとは思えない読み応えでした。冒頭から終わりまで、進行に必要な情報がきちんと出そろっていて、話の筋としての違和感はなく、絵もまとまっているので読みやすかったです。読みごたえと関連する話で、密度の濃い話が展開されているからこそ少し画面作りの観点で気になったところがありました。それは、テンポが重く感じたことです。色の付け方か、線の差別化か、あるいはもっと別の問題なのかは指摘できないのですが、全体的に背景とキャラクターの情報が同じレベルで読み取れてしまい、駅のシーンあたりで多少読みつかれてしまう感覚を持ちました。もしかすると、文字量が多いことも関係しているのかもしれません。(また、印刷して読むとまた違う印象になるかもしれないです。)

 それ以外では特段気になる点はなく、素直に小野寺さんと主人公の話に入り込んで読むことができました。ギミックとして使われているスマホも読みにくいということはなく、きちっと意識的に演出されていて読みやすかったです。

 何度か場面転換を挟みますが、そのたびにちゃんと背景の分かるコマを見せてくれていたので混乱することなく読み進められました!

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『コンビニメイド』作者:くたくた

 男の子が家出していた理由が気になりますが、それ以上に物語が面白く読めました! 女の子と店長の関係も、すごく気を使って描かれているように見え、ここでつまずくことなく読み切れました。二人の関係について、きちんとマンガの中である程度説得力のある説明を提示できていて、もうヤダ! とか、キモすぎ! とかまで行かないレベルに調節されているように感じます。

 冒頭も1ページから文字を読んでもらおうという作りではなく、読者として物語に入り込むまでの滑走路が非常にストレスなく、助かりました。常時伏し目がちの女の子の造形も、ドアにしがみついたままのぞき込んでいる店長もキャラクターとしてすごく納得感があり、読みやすく、理解しやすかったです。

 PCで読んでいるためか、少し黒が強く、目にテカってくる感じというか、主張が強すぎるような印象を受けました。印刷して読むと、あるいはモニター環境が変わるとまた異なった印象になるかもしれません。4ページを見ると、2コマ目のグラデーションは特に強く感じず、ほかの黒は強く感じました。

 演出のコマ、というより吹き出しのないコマといった方が正確かもしれませんが、5,6ページは読むストレスが少ないのに何を書いてあるのかが良く分かるし、キャラクターの心の動きや感情などがすごく良く伝わって来ました。

 後半の展開については、確かに多少コミカルな雰囲気は有りますが、くたくたさん特有のキャラクターリアクションや口元のデフォルメにこのテンションがすごくマッチしていて、個人的には非常にしっくりきました。とても面白かったです!

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『ブラックコーヒーを飲める先輩』作者:盛平

 全体的に密度が高く、それでもコマの使い方や絵の魅せ方で何が起きているのかすごく分かりやすくなっていたように思います。キャラクターのリアクションも良い意味ではっきりしていて、読者が読解に迷うことが無い作りになっているのかなぁと感じました。その上で、もともとの絵柄や盛平さんの好みなのか、キャラのリアリティに対してどこかコミカルな動きが多く、目が楽しいマンガだったなぁという印象を強く受けました!

 キャラクターの移動や、場面転換がある際にはわかりやすく背景情報を見せてくれていて、そういう作りも読みやすさを支えているように思います。また、背景もオフィスモノとして十分なほど書き込まれているように感じました。一方で、配色の問題か(ほかの方でも同じことを感じたのですが、モニターで見ているとやはり黒がすこし強すぎるように感じました)、画面が強すぎる(絵の情報量が多すぎる)ような場面があるようにも思えました。

 時間や、作業量の問題だとは思うのですが、缶飲料をどう描くか(黒塗りなのか、簡単でも山を描くのか、など)はマンガ全体で統一されていた方が読みやすいかなぁという印象です。四角コマについて、7ページ『ひどい言いがかり である』だけ作者の(メタ視点の)ツッコミだったことに、初めて読んだときには気が付きませんでした。四角コマを取りさり、手書き文字にするなど、キャラクターのモノローグとは差別できるような書き方にした方が誤読は少ないのかなぁと思いました。

  9~10ページにかけての演出、とても良いなぁと感じました! コマの使い方と背景で、(読者としても)なんだかいい雰囲気にもっていかれるんだけど、10ページでひっくり返されるのは読んでいてとっても気持ちが良かったです(笑)

 細かく気になる点があると言えばあるのですが、それを差し引いてもマンガとして楽しく読むことができました! 絵も非常に可愛らしく、魅力的だし、キャラクター造形もどこか独特なところがあって、とても愛着を持てるように感じました。読んでいて非常に楽しかったです!

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『料理道具フェチのヤバイ旦那』作者:のり漫

 1ページですでにギャップがあり、このマンガへの期待感を高めるような作りが出来ているように感じました。同時に主人公が少し分かりにくいかなぁとも考えたのですが、読んでみるとそこまで気にならず、面白く読み切れたように思います!

 アピールにもありましたが、全体として吹き出しや文字の量が調整されていてとっても読みやすかったです。絵だけで魅せられるところはきちんとそのように描かれているし、メリハリをつけるように大ゴマが使われているので心地よく読み進められました。大ゴマのあとにすぐ展開のコマが来るのではなく、余韻や受けのリアクションをきちんととってくれているのも、ついていきやすかった要因に感じました。

 以下については原因が分からないのですが、12ページの『このニオイ… カレー?』という台詞を4,5回ほど『このカレー? ニオイ…』の順で読んでしまいました。おそらく、右側の、大きく切られた台形のコマの流れを目が捉えていて、パッと見たとき無意識に斜め読みをしようとしてしまうのだと思うのですが、これが普遍的なことなのかどうかわかりません……。

 5ページの『きいてないけど…』の無関心感や(眉毛は書き忘れでしょうか?)、13ページのヨロヨロと額に手を当てながら帰ってくるシーンはとても良いですね! 黒髪の子のキャラクターを感じる上に、物語の構造を明確にする演技でスムーズな読みを支えているように思えました!

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『癒しをください!』作者:片橋真名

 すごくほのぼのとしていて、心穏やかに読むことができました。近頃のトレンドにマッチしているかはわかりませんが、キャラクターのギャップも良い意味で王道していて、落ち着いた楽しみ方ができたように思います。
 虎塚くんもすごくかわいくて、かわいかったです。

 2人ともすごくかわいらしかったのですが、欲を言えば、二人の顔が同じコマに入っているシーンがもう少しあるとより”ぽい”のかなぁと感じました。現状のモノでも二人で並んでいるコマはあるのですが、片方がすっかり背中を見せていたり、遠目の引きだったりするものが多かったので、もう少し横並び感が出ると良いのかなぁ、と。手元にあるBLマンガ(あるいはBLマンガ家によるマンガ作品)では二人が一つのコマに入ることが多かったので、少し気になりました。

 9ページとか、虎塚君はめちゃくちゃかわいいのですが、現状のモノだと読者としっかり目線があってしまっていて、藤田君に向けた笑顔というよりも読者に向けた笑顔のように見えてしまって、BLという観点では少しもったいない印象を受けました。(BLとして読むとき、読者はあまり藤田君に視線を重ねないように思います。この前提が違っていたらすみません……。)

 男の子が二人ともすごくかわいくていいマンガでした。

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おわりに

  諸々あってこの時期の更新になってしまいました。
 今まで通りの更新時期にお待ちしてくださっていた方にはごめんなさい。
 さて、というわけでだいぶん期間が開いてしまいましたが第4課題・『キャラクターを作る』における完成稿を読みました。

 今回は通常より少し期間に余裕があったためか、提出作はどれも力作が揃っていたように思います。そして個人的にも、このようにまとめて読むことで様々な気づきがあり、とても刺激的な回でした。たくさん勉強させていただいたように思います。

 授業の振り返り記事など、まだ年明け前のスケジュールには戻っていませんが、今後も変わらず記事にしく予定です。

 楽しみにしてくれている方がいらっしゃいましたら、申し訳ありませんが暫しお待ちください。

 それでは、次の記事でお会いしましょう。

 記事を書くにあたって改めて慎本真さんの講義を聞き直しました。復習も出来たのですが新たな学びもあり、多くの刺激を頂けたように思います。3月15日には慎本さんの『推しが我が家にやってきた!』第四巻が発売されます! 是非!!

推しが我が家にやってきた!(4) (ポラリスCOMICS)