とらじろうの箱。

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【ひらめき☆マンガ教室】第3回課題・画面を作る 完成稿編【第4期】

第3回課題・画面を作る

前置きがあるので、読み飛ばしたい方は目次からお好きな場所にお飛びください。

はじめに

 ひらマン4期聴講生の「とらじろう」と申します。今回は第3回ネーム講評会を受けて製作された完成原稿へのコメントを書いていこうと思います。

 以下に、本エントリーの構造を示します。

  1. 課題文の要約
    どんな漫画をどういう風に書いてほしいと言われたのか、ぼくなりに一言か二言でまとめます。
  2. 何を意識して作品を読んだか
    2つ3つほどの要素を提示します。その点については意識的に読み取ろうとして読んだよ、という意思表示です。
  3. 作品を読んだ環境
    PCで読んだ、とか、スマホで読んだ、A4に印刷して読んだ、とかそういう奴です。ひらマンでは『誰に向けて描いたのか』が大切だと思うので漫画がどのような媒体に掲載されるのか(どのような環境で読まれたのか)は大きな要素であると考えてこの欄を設けます。
  4. 作品へのコメント
    エントリーの本丸ですね。長くなり過ぎないように心がけますがシンプルに作品へのコメントを描きます。ただし、少なくとも一つは「ここはこうした方が良いのでは?」的なことを書くつもりです。
課題文の要約

 冒頭から読者を引き付け、読みやすく、あなたの主張が伝わるマンガを、魅力的なヒロインを題材に使って描いてほしい。

何を意識して作品を読んだか
  1. 『アバン』が機能しているか
    まったく興味を持っていない読者として、1ページを視界に入れた際、続きを読んでみようと思うかどうかということです。
  2. 読みやすいか
    第2回講義でも言われたことですが、読者はストレスを感じると読むのをやめてしまいます。冒頭で読者を引き付けても、途中でリタイアされてしまうとマンガを描いた意味がなくなってしまうでしょう。そういう意味で、いかにストレスなくマンガを読むことが出来たかということを意識ながら読んでいきます。
作品を読んだ環境

 スマートフォンを利用して読みました。

 以下、コメントへ。

作品へのコメント

『ソネザキ童心チュウ。』作者:シバ

 全体的にデフォエルメされた動きによって、ソネザキさんのおちゃめで可愛らしい雰囲気をとても上手く作れていて、非常に暖かい気持ちで読ませてもらいました。漫符の使い方や多彩なコマ割りで目が飽きることもなく、テンポも変化があったので退屈せず読み終えました!

 1ページなのですが、間白が黒く塗られていて「ん?何かあるな」という感覚を持ちました。一方でこの演出の為に2コマ目への視線誘導がうまく出来ておらず、1コマ目を読んだ後はどうしても3コマ目に視線が誘導されてしまいました。間白が非常に狭いことに加え、『そんな想い出はありますか?』と『なんてね』が縦に並んでいるうえに距離も近く、そちらへ引力が働いてしまっていることなどが原因なのではないかと感じました。

 また、立ちきりの使い方が全体的に気になってしまいました。多くの場合は断ち切りを使う意味が分かったのですが、3ページや5ページ、15ページなどでは断ち切りにしているところが増えた面積の分だけ単に空白になっていて、違和感のある余白として見えてしまいました。

 これは中身の話ではありませんが、マンガの中で三点リーダが二点だったり、コマ線の太さが一部分だけ異なったりしていて多少ストレスを感じました。

 画面が非常に整っていて、すらすらと読むことが出来ました。会話が多く、文字の多いネームですがそれでもきちんと演出がされていてマンネリ化せず、楽しく読めました~。

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『SPiCE LOVE』作者:かれーとさうな

 作画を友人に頼んだということで、どうコメントするのかがめちゃむずいです(苦笑)。とはいえ、ひらマン的には全然アリなので読んで行くぜ!
 ネームアピールに書いてあるように、原作者としてマンガを描く上では作画の方とのコミュニケ―ションが重要になると思います。書き文字と台詞の写植で色が異なっている点を気にしていましたが、そこに関してはそういうものとして統一されていたので、読む側としては全く気にせず読むことが出来ました。

 アバンについてはあまり機能していないように感じますが、このマンガは恐らく料理雑誌か何かに乗るものだと思うのでマンガであるというだけで目を引き付けるのかなぁと思いました。また、そういった意味でキチンとカレーのレシピを載せていたり、写真を載せていたり、カラーで描いていたりと良い点が多いように思いました。

 読みやすさについてですが、正直、文字はあまり読む気になれませんでした。一方で絵の方はとても分かりやすく、文字を読まなくてもなんとなくの展開・内容は把握でき、カレーを食べたくなったのでこのマンガの目的としてはそれでいいのかなぁとも思いました。

 あとはなんと言っても、インディカ米でカレーを作っている点が好ポイントです。当たり前に鉄鍋を使っていたり、お家カレーを想定しているのであれば若干ハードルが高いようにも感じましたが、カレー愛が伝わって来たので最高でした。

 今度インディカ米の品種を教えてください。

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『ブルー・メッセージ』作者:コバヤシ

 シンプルにキャラクターの完成度が高く、楽しく読めました! 主人公の男の子とミミさんの描き方も分かりやすく、二人の行動動機に違和感を持つことが無かったのでストレスも感じず最後までページをめくることが出来たのだと思います。

 アバンに関しては可愛い女の子を大きく、その上で見せるべきところを見せて描いてあるので、少し弱い印象もありますが、機能はしているように感じました。以下が感覚的になってしまって大変申し訳ないのですが、ネーム時に比べてペンが入ると少しテンションが高すぎるように映りました。おそらく、ネーム時では背景が無く、一見してファンタジーな空気を感じ取っていたためにこのテンションを現実から切り離して読むことが出来ていたのだと思います。ペン入れ後では背景がしっかり描けているのでファンタジーより少し現実感のある世界へ寄ってしまう感じがあり、明らかな説明キャラであるオジサンズが愉快に見えてしまうのかもしれないと考えました。

 背景とキャラの線が明らかに異なっていて、ある意味でゲーム的ではあるのですが、そういう観点からすると全キャラクターがプレイアブルキャラクターに見えるのに、演技過剰な人が居て違和感があるということなのかもしれません。もしかすると、背景に比べてキャラクターが見えやすすぎるために、二つの世界が統一されているように感じないのかな……。

 キャラクターの可愛さが抜群で、良い武器を持っているなぁと感じます! マンガとしての内容も可愛くてこの女の子を描ける作家さんに求めているような内容と合致しているのではないかと思いました!!school.genron.co.jp

『あの子の痕跡』作者:のり漫

 序盤が楽し気な雰囲気で始まるだけに、途中からの急展開で一気に持っていかれる感覚がありました。悲しげで切ない空気感がありながらも、最終的にはそれを受け止めて前に進もうとする主人公が描かれているので、読者としてこの物語に引きずられすぎることもなく読み終えるのではないかと思います。

 冒頭についてですが、これは取り合えず読者は1ページくらい読んでくれるだろう、という前提があるアバンのように思えました。少なくとも第3回講義で言われていたアバンはこういうものではなかったように記憶しているので、もしそこにズレがあるとすれば作者の意図した冒頭にはなっていないのかなぁと感じます。

 物語が転がり始めて怒涛の回想に入る9ページですが、読者としては一度ここで部屋の全体像を見たいかなぁと感じました。17ページで回想の圧力を開放するように部屋が描かれますが、玄関から見た部屋の雰囲気でも9ページで描いてあるとのり夫さんがド動いているのか把握できてより17ページの俯瞰図が印象的に映るのではないかと思いました。

 切なく、心に来るようなマンガになっていたと感じます。のり夫さんの変化も馴染みやすく、オチがきちんと一歩前進するような形になっているのも好印象でした!
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『樹海でボーイミーツガール』作者:畑こんにゃく

 初見時と比べてしまうと流石にインパクトは薄いですが、それでも十分衝撃的で非常に楽しかったです。講義でも指摘のあった部分ですが、歯磨きの件などは本当にテンポが良く、ここまで読んだらもう作者の勝ちだよなぁという気分にさせられます。

 時間がなかったようですが、完成稿なので1ページにある誤植はあまりよくないのかな、と感じます。完成稿を仕上げる中でミスがあることは仕方がないと思いますが、今回のような誤植、それも1ページにあるものは極力なくした方が良いのではないでしょうか。

 9ページの台詞に関して、少し視線誘導がうまく出来ていないのかなぁという印象がありました。『マイコ・・さんって 名前なんだね』のあと、『うん』に視線が誘導されず『同棲してた元彼にね、 別れを 告げようとしたら』の方に誘導されてしまいました。吹き出しの縦軸をずらしたり、間をもう少し離したりして目線が一度途切れるようにすると作者の意図したように読者の視線が動くのではないかなぁと思います。

 全体的に時間がない中で作業を行っていたことが伝わってきてしまうような完成稿だとは思いますが、やはり内容やアイデアそのものは非常に興味深く、面白いので目を引き付け、楽しく読める漫画だと思います! 背景も必要な所はきちんと書いてあるので混乱することもなく、楽しかったです~!!

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『ラッキーサーティー』作者:くたくた

 分かりやすい! 時折文字で読ませようとしている部分もありましたが、基本的には絵と演出で読ませようという構造になっていて非常に気持ちよく、楽しみながら読みことが出来ました! アバンとしてはやはり、2ページの絵を上手く使いたいなぁとは感じますが、それ以上にマンガ全体をマンガとして読ませようとしてくれているのでとても読みやすく心地よかったです。

 スマホの使い方についてもとてもスムーズで、第2回講義での内容を踏まえていることが良く分かりました。また、主人公の反応や女の子の反応についても大きく「これはないやろ」と思うことが無く、本当に読みやすかったです。

 強いて言えばまだ少し演出や見たい絵が足りないかなぁという印象は受けてしまいました。例えば、7ページや13ページなどがそうです。この二つのページは物語としても非常に重要なシーンなので、やはり登場人物の心情に変化がある際にはきちんとリアクションのコマがあって良いのかなぁと思います。核心を突かれた際の変化や、コミュニケーションを恐れながらも歩み寄ろうとするシーンではやはり、もう少し間があった方が盛り上がるのではないかと感じました。

 やはり全体的にとても読みやすく、演出も多いため心地よかったので、変に演出の足りないところが目についてしまったような気がします。コマ割りも独特なものが多い様な印象を持ちましたが、それでも読みやすさをそこまで損ねていなかったので、非常に楽しめました!

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『屋上の天使』作者:柴田舞美

 冒頭の天使がとても格好良くて「なんかやってんな!?」感があり、とても良かったです。また、場面や舞台設定の説明も分かりやすくなっていて、主人公の女の子がこのマンガにおいてどのように浮いた存在なのかがすぐに分かり、読むストレスも少ないように思えました。

 一方で、1ページ4コマ目の『一部崩れて――』は無くても良いのかなぁと感じました。屋上が立ち入り禁止であることは一般的に当たり前としていいことだと思いますし、7ページでも「立ち入り禁止」であることが触れられているのでこちらだけでも十分なように思います。

 アピール文で気にされていた夜空の処理と読みにくさについてですが、夜の雰囲気はとても良く伝わってきたように感じました。他方、読みにくさの方ですが、そちらに関しては背景とキャラを同一化しているからなのではないかと思います。マンガではバックを黒塗りした際にはよく背景とキャラの間に繭のような白い空間が描かれるのですが、今回のネームではまさしく夜空に溶け込むようにキャラクターの線と夜空とが区別されていないのでパッと見たときにキャラクターを捉えにくく、読みにくさにつながるのではないかと感じました。とはいえ、これで醸し出されている雰囲気もあり、ぼく個人としてはこの空気感も大好きなうえ、気になる程読みにくいわけではないと思いました。

 6ページの吹き出しの使い方は少し気になります。『ふふ…』がトゲ無し吹き出しなのにそこに続く二つがトゲ有りで、その上『あの時、あなたが 私を見ていたこと』という台詞が話者からそこそこ遠いので、変に主人公の台詞かと戸惑ってしまう印象を受けました。

 雰囲気のある絵を描くことが出来ているので、このようなミステリアスなキャラクターがとても映えるなぁと楽しかったです。途中途中でコマを大きくし、テンポを変えてくれていることもあり、退屈せずに読み切れました!!

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おわりに

 今年のひらマンは、ひらマンと長い間関係を持っている講師の方による講義が前半にまとめられていました。そして第3回講義ではそのトリとなる師走の翁さんが行ってくれたわけですが、正規受講生の完成稿がグングンレベルアップしていることに素直な驚きがあります。

 今までの全講義を合わせると丸1日をかけても見終わらないくらいの時間になりますが、少しずつでも振り返りながらマンガを描き続けて行けばどこまで行ってしまうのだろうかとワクワクします。

 さて、というわけでマンガと言うものに様々なアプローチを行っていたのが今までの講義でしたが、次回の講義はそのものズバリ「キャラクター」が焦点になります。

 いやぁ、今から楽しみだ!

 それでは、また次の記事でお会いしましょう~。

 第3回講義については以下の記事でも触れておりますので、お時間があれば是非ご一読ください!

 

toraziro-27.hatenablog.com